かつてユークが赤魔道士として在籍していたAランクパーティ「サンダーパイク」。
だが、ユークの離脱をきっかけに、転落の一途を辿ることに――それも仕方ないと思えるほどの「悪役」として振る舞う「サンダーパイク」とそのメンバーについて、リーダーであるサイモン役の中島ヨシキさんと、バリー役の世界(EXILE/FANTASTICS)さんに話を聞いた。
化学反応を期待した珍しいアフレコ現場
――おふたりはパーティ「サンダーパイク」のメンバーですが、まずは役に選ばれた経緯を伺えればと思います。
中島 僕はユークのオーディションを受けていたんです。彼はまっすぐな主人公なのに対して、こちらはちょっとひねくれていたのかなって(笑)。
世界 そんな風に(笑)。
中島 なぜか、サイモンのような高ランクパーティから主人公を追い出す役が多いんです。追放したり、されたり……(笑)。役が決まって改めて原作を読み返したら、「ああ、やっぱりイヤな奴だなぁ」と。
――なるほど。世界さんはどのようにバリー役に?
世界 僕はテープオーディションを経てバリー役に決まったのですが、彼のような脳筋タイプをこれまで演じたことがなかったので、不安もありましたね。ただ、共通の友人がいるヨシキがいるのは先に教えられていて(笑)。現場に入ったとき、最初に声をかけてくれたのも彼で。
中島 だって、アフレコブースの一番端っこにひとりでいるから(笑)。
世界 そりゃ端っこにいるしかないですよ(笑)。初回の収録だったので人数も10人以上いましたし。バリーについては、僕もイヤな奴だと思いました(笑)。実生活でもいそうなタイプですよね。
――物語の全体の印象はいかがでしたか?
中島 配信という要素があって、良いことも悪いことも全部世間に流れてしまうのが印象に残りました。それで「サンダーパイク」が転落していくのが現代っぽいなと。あと、冒険配信を解説してくれるショウとガトーも、すごくキャラ付けされていて、めちゃくちゃ濃いですよね。そこに世界くんや田村真佑(乃木坂46)さんとか、普段は別の場所で活動されている人たちがキャストとして参加されるというのも面白いと思いました。
――現場の雰囲気もいつもと変わりそうですよね。
中島 それはすごく楽しみでもありました。世界くんとは一緒に収録もできたので、思った以上に現場に馴染んでいて。
世界 ありがたいです。
――世界さんは、この物語の感想はいかがですか?
世界 原作を読んで、王道の世界観に付随してキャラクターひとりひとりの性格やそれぞれの関わり方がすごく丁寧に描かれていると思いました。アニメになるとさらにそのあたりが伝わるのではと。
――関係性がしっかりと描かれていると。
世界 そうですね。あとは僕は別の業界からやってきた人間なので、現場に化学反応を起こさなくては、と思うところもありました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか? キャストのみなさんのお話を聞くと、和気藹々としていたのかなと思いましたが。
中島 そうですね、シルク役の川井田(夏海)さんを中心に。それと、(ベンウッド役の)小山(剛志)さんがとても賑やかで面白いイケオジで(笑)、場をすごく明るくしてくれます。
世界 そうだね。逆にユーク役の峯田(大夢)くんは、最初はすごく緊張していましたね。
中島 そうですね。やはり座長としてプレッシャーを感じていたと思います。彼に限らず、「クローバー」の4人が、現場では比較的後輩だったので、周囲の先輩たちが現場の雰囲気を柔らかくしようと、やいのやいの言っていました(笑)。
世界 僕も、あの手この手を使って明るく和むように。
中島 毎回、コーヒーの差し入れをしてくれて。
世界 なるべく雰囲気が和んだほうが、結果に繋がるんじゃないかなと思いながら。とはいえ、僕が何かしなくても、収録中はみんながすごくボケるので。
中島 アドリブをするのはあなたもよ(笑)。
世界 一度ツッコんだらみんなが笑ってくれたので、「あ、いける」と思いました。それは助かりましたね。
サイモンとバリー、ふたりに共通しているユークへの想い
――「クローバー」と敵対するパーティに在籍するわけですが、いわゆる敵役の彼らをどのように演じようとされましたか?
中島 サイモンはイヤな奴全開で、嫌われにいこうという意識で演じました。なんですけど、それをやっていたら他のキャストから「サイモンカワイイ」って言われる現場で。「あれ? そうなの?」という(笑)。本当は、視聴者を苛つかせることができれば勝ちなんです。彼はヒールにも満たない小物なので、僕自身もまったく感情移入できない(笑)。その「イヤなやつ」を伝えるために、いろいろ演技面でも付け足しました。
――演じる上で、監督や音響監督からのディレクションはありましたか?
中島 めちゃくちゃ自由にやらせてもらいましたね。「もっとオーバーに」くらいで。
世界 バリーはもっとイヤな奴感を出して良いですよ、と言われました。僕はバリーとは真逆で、すごく良い奴なんで(笑)。
中島 それは僕もだよ(笑)。
――「サンダーパイク」を突き放してもらえるように。
中島 サイモンは共感を呼んだりする憎まれ役ではないので。感情表現も0か100です。叫ぶところはヒステリックだし、自信があるときはもう顎が上がっちゃうくらいの感じ。
世界 僕個人から見てもサイモンはイヤな奴なんですけど、バリー視点では、「ちょっとカワイイ兄貴」みたいな捉え方をするようにしましたね。
――なるほど。
世界 バリーって実はずる賢くて、意見もコロコロ変わるんですけど、ちょっとだけ人間味がありますよね。サイモンに自然と甘える子分気質というか。そういうバリーらしさは考えながら演じていましたね。
――中島さんから見たバリーの印象はいかがですか?
中島 サイモンがペラペラと口八丁なのに対して、バリーは思ったことをストレートに話していますね。セリフの量でいうとサイモンが長々喋っていますが、言っていることはバリーと大体一緒(笑)。ふたりに共通しているのは、なぜかユークを見下していることです(笑)。
――そんなユークに対してふたりはどのような思いを抱いているのでしょうか。
中島 歪んだ愛情ですけど、サイモンはユークのことを幼いときから大好きだと思うんですよね。だけど、ずっと見下してきた友達が、じつは優秀だったことが受け入れられない。
――思った以上に成長したユークに耐えられなかった。
中島 サイモンは高いプライドを持っていて、挫折せずに来てしまっているので。だから、ユークが本当に離脱するとは思っていなかったと思います。考えが浅はかなんですよ。
世界 バリーの立場からすると、そんなユークとサイモンを遠巻きに見ているだけなので。だから、サイモンがなぜあれだけユークに固執するのかもわかっていない。そのせいで、「パーティに戻したいなら戻せば」と軽々しくも言える(笑)。
殴られてもスカッとしてしまう「サンダーパイク」の振る舞い
――おふたりが好きなシーン、印象的に残っているシーンはありますか?
中島 第6話でベンウッドさんに殴られるところですね。
世界 (笑)。
中島 ちゃんとお仕置きされました。キレイな正拳突き。サイモンを演じる僕としても気持ち良かったですよ。的はずれなことを喚き散らかしていましたからね。「やっと殴られてくれた!」と。
世界 僕はそれを横で見ているだけでしたけど、個人としても「ありがとうございます!」という気持ちでした(笑)。
中島 あの場面、ほかの「サンダーパイク」のメンバーにはセリフもないよね。
世界 駆け寄るわけでもなく、本当にただ見ているだけ(笑)。
中島 「俺じゃなくてラッキー」とか、バリーも思っていたのかな(笑)?
――ちなみに世界さんが「マブダチ」と呼ぶ零さんが、オープニングの主題歌を担当しています。
世界 本人もアニメ好きなので嬉しかったと思います。主題歌を担当することを知った直後に、「最後まで生き残るんですか? 世界さんは」と言われました(笑)。
――とても良い視点ですね。
世界 もちろんノーコメントを貫き通しましたが。「キャスト起用おめでとうございます」とかではなく(笑)、開口一番、それを聞かれました(笑)。
――ただ、「サンダーパイク」が今後どうなるのかは、視聴者のみなさんは気になるところだと思います。
中島 そうですね。ただ、彼らにはもう没落しかないですからね。
世界 正論はひとつも言ってない。暴論しかない。そんな世界中から嫌われているかもしれない「サンダーパイク」ですけど、キャスト同士は仲が良いので。
中島 そうだね。M・A・Oさんは参加できなかったんだけど、世界くんと南條(愛乃)さんと、なぜか小山さんも含めてご飯を食べに行ったしね。なぜ殴った側の小山さんがいるのかなとは思いましたけど(笑)。
世界 本当は、サンダーパイクでイベントをやりたいんですよ。いつもイベントに参加するのは僕ひとりなので。「クローバー」はいつも全員揃っているから、4対1。だからもう輪に入れない(笑)。
――おふたりは初共演でしたが、実際にやってみていかがでしたか?
世界 みなさん優しく見守ってくれたので、本当にありがたかったですね。僕、ガヤをやるのもはじめてで、そういう初体験のことも多くありました。
中島 そうか、コロナ禍もあったから。みんなで収録する機会も少なかっただろうしね。
世界 ただ、ヨシキのことは共通の友人から話を聞いていたので、頼りがいがありました。実際に現場でも――。
中島 ふたりでふざけ倒してね(笑)――とにかく連続2クールあるこの作品の序盤を、「サンダーパイク」で最後までガツンとかまそうと思っています。M・A・Oさん、南條さんと一緒に。
世界 そうですね。まだまだ「サンダーパイク」をよろしくお願いいたします!
<プロフィール>
中島ヨシキ(なかじま・よしき)
81プロデュース所属。神奈川県出身。近作に、『Unnamed Memory』(オスカー役)、『エグミレガシー』(モヒカン・ドット役)、『最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える』(ロイド役)などがある。
世界(EXILE/FANTASTICS)(せかい)
EXILE、FANTASTICS のパフォーマー。神奈川県出身。声優としての出演作に、『転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』(フジ役)、『遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!』(ザ☆イエティ雪男役)、『とあるおっさんのVRMMO活動記』(グリーン役)、『劇場版シティーハンター 天使の涙』(モヒカンの容疑者役)などがある。